法力使い
ゾージャは夕食後は本を読むのが日課だった。特に用がないときは自分の部屋で本を読んで過ごしていた。そして今井もゾージャと一緒にいた。本心は1人で自分の部屋にいたかったが、一緒にいた方がゾージャが喜ぶと思ってゾージャの部屋で一緒に本を読んでいた。
しかし、今日は、昼間の沖田さんの話が気になっていた。
「ゾージャ、私がここにいても法力使いは危険なの?」
ゾージャは顔を上げた。
「何を心配してるんだ?」
「あたし封印を破って逃げ出したでしょう。法力使いは私を追いかけていないのかと思って」
ゾージャの顔が急に険しくなった。
「確かに、そうだ」
「ここにいれば大丈夫よね」
ゾージャは深刻な顔して考えている。
「もし、やつらがもう一度封印するつもりなら・・・」
ゾージャはその考えを振り払うように頭を振った。
「大丈夫だ、そこまでしつこくないよ。逃げた事にも気がついていない」
「逃げたことに気がついているよ」
気がついていることは間違いない。
「大丈夫だ、気にするな」
そう言われると逆に気になってきた。
「ここにいても、安全じゃないの?」
「ああ、やつらが法力で襲ってきたら、向こうの世界に引きずり出されて封印されてしまう」
そうなのか、今井はだんだん怖くなってきた。
「でも、居場所が見つからないと大丈夫なんでしょう?」
ゾージャは心配そうな顔をしている。
「やつらが、本気で探せばそのうち見つかる」
「見つかったら、どうなるの?」
「探していないよ、心配するな」
探しているのは間違いないのだ。では封印されてしまう。
「封印されたら、どうなるの?」
ゾージャは辛そうな顔をしている。
「その話はやめよう」
「教えて、どうなるの?」
「この前のは偶然で、普通は死ぬまで封印される」
「いやよ、ぜったい、いや」
あんな狭い穴の中に死ぬまでいるなんて。考えるだけでも恐ろしい。
「ゾージャ、どうすればいいの?」
「だから、探していないって」
「探してるわよ。法力と戦うにはどうすればいいか教えて」
「探していないって」
ゾージャは頑なに首を振る。
「ゾージャ、お願い、法力との戦い方を教えて」
「法力に抵抗する方法はないんだ」
そんなバカな、封印されてしまう。
「でも、今までは、大丈夫だったんでしょ」
「それは、人間を襲っているのが君だと人間に分からなかったからなんだ」
そうなのか、ナキータだと分かってる今、ナキータの逃げ道はないのだ。
「ゾージャ、助けて、封印されるの絶対にいや」
今井は本気でゾージャに抱きついた。
ゾージャはナキータをやさしく抱きしめてくれる。
「心配ないって、探していないよ」
このままでは封印されてしまう。法力でなんとかする以外にない。
最初からあきらめるなんてできない、絶対に戦ってみせる、俺には法力がある、法力で戦おう。
今井は今日から法力の練習をするつもりだった、しかし、どうやって法力の使い方を会得するかまったく当てがなかった。